現地レポート

5月21日 世界最高のフットボーラー

2008.09.26

現在、世界最高のフットボーラーと言われている選手をご存知ですか?

一昨年は、ロナウジーニョ(バルセロナ)、去年はカカ(ACミラン)がそう呼ばれていました。そうです。毎年毎年、私たちは世界最高のフットボーラー達を、クラブのワールドカップという舞台で目にしているのです。
そして今最も旬な男と言えば、マンチェスター・ユナイテッドのクリスチアーノ・ロナウドです。2007-08シーズンには、シーズン最多得点記録タイの31得点で得点王になり、チームのリーグ2連覇にも大きく貢献しました。

圧倒的なテクニックもさることながら、その甘いマスクで多くのファンを魅了、世界的なCMにも出演する超スーパースターです。

私のヨーロッパ・チャンピオンズリーグ取材の裏テーマは、このC・ロナウド擁するマンチェスターUを勝たせて、日本に連れてくること。ハッキリ言って全く関係ないと思うのですが、スポーツ中継の世界では、ディレクターの運の良さ、引きというものが語られたりします。

もしマンチェスターUが負け、C・ロナウドが日本に来ないとなれば、私に「運を持っていない男」の烙印が押されてしまうのは間違いない!かくして私は、決勝のマンチェスターU対チェルシーを取材しながら、必死で念を送り続けたのでした。

■本当に運を持っている男とは!


決勝は5月21日。昨年に引き続き、解説の北澤豪さんとの取材です。決戦の舞台はロシアの首都モスクワにあるルジニキ・スタジアム。かつては、レーニン・スタジアムと呼ばれており、そのスタジアム正面には堂々たる銅像がそびえ立っていました。思わず2人で記念撮影!

今回は史上初のイングランド勢同士の決勝。はるばるイギリスから何万人もの両チームサポーターが押し寄せてきたとあって、試合開始前からスタジアムは異様な盛上り!この試合、私の目に焼きついた最も印象的なシーンは、試合開始から3時間あまり経った、深夜2時を回ろうかという時に訪れました。

雨中の死闘は、前半26分にC・ロナウドのヘディングでマンチェスターUが先制するも、前半終了間際にチェルシーが同点に追い付き、延長戦でも決着が付かないまま、PK戦へと突入。

2人ずつ成功させて迎えた、マンチェスターUの3人目がC・ロナウド。蹴る直前、一度止まりフェイント。「やばい」と思った次の瞬間、C・ロナウドのキックは、GKチェフに止められていました。スタジアムは、悲鳴と狂喜で、この日一番の大音量に包まれました。チームの柱C・ロナウドのPK失敗。間違いなく敗戦の流れです。

しかし,ここで信じられない事が起きたのです。決めればチェルシーがヨーロッパ王者という場面、キャプテンのテリーの蹴ったボールはポストを直撃!テリーは雨で濡れたピッチで足を滑らせてしまったのです。これで流れが再び変わりました。両チームが死力を尽くした激闘は、PK戦の末、マンチェスターUがヨーロッパ王者に輝きました。

C・ロナウドはその時・・・。チームメイト達が歓喜の輪を作り、サポーターに向かって走っていく中、彼一人だけが、センターサークルで倒れこみ、そのまましばらく動かなかったのです。このシーンが私の最も印象的なシーンでした。

九死に一生を得た安堵感を噛み締めていたのか・・・。その心の内は本人にしか分かりませんが、ロナウドの姿だけが、歓喜や落胆を分かり易く表現する両チームの誰とも違った存在感を示していました。だから彼はスーパースターなんだろうと。PKを順当に決めて勝っても、PKを外したまま負けてしまっても、どちらにしてもC・ロナウドは、この試合の主役ではなかった。「運を持っている男」、そして「画になる男」とはこういう奴のことをいうんだなー。

■BELIEVE


試合直前、勝利を信じるマンチェスターUサポーターがスタンドいっぱいに描き出した「BELIEVE」の人文字に鳥肌が立ちました。私もその時、C・ロナウドに「BELIEVE」と伝えたい気持ちになりました。本人だけでなく母親も昔から憧れていたと言われるレアル・マドリード(スペイン)への移籍が囁かれるC・ロナウド。「信じています、どうか移籍しないで!」と。

その祈りが通じたのか、C・ロナウドはマンチェスターUに残留を決めました。これでしばらく、私が「運を持っていない男」の烙印を押されることはありません?!

あの瞬間から、私は強運の持ち主C・ロナウドが必ず見せるであろう次の劇的ドラマへ期待を膨らませています。最も旬な男C・ロナウドのプレーを全世界へいかにして伝えるのか―。連覇を狙うヨーロッパ代表の戦いにもご注目ください!!

(ディレクター 笈川 真)