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©Photo RMN - H.Lewandowski

 大きな積藁の前で農作業を行う三人の若い農夫たちの姿が厳かに描かれています。彼らは秋の柔らかな陽差しを浴び、激しい労働は静寂の中で淡々と続けられています。画面各所でハイライトと影の対照が効果的に使われ、それが作品に深みを与えています。ミレーはノルマンディー地方の小村に生まれシェルブールにて絵を学んだ後、パリに出ました。そこでアカデミスムの大家ポール・ドラローシュに師事して宗教・神話的主題や肖像画を描きますが、サロンには不評で、1848年頃より農村の風俗を描くようになりました。そして翌年には大都市パリを離れ、近郊のフォンテンブローの森の一隅にある小村バルビゾンに家族とともに移り住みました。そこでは1830年代から60年代にかけて、自然主義の姿勢を共通点とし、ロマン主義から印象主義へと移行する時代の動向を形成した風景画家たちのグループ、バルビゾン派が形成されていました。ミレーはそこで、やがて農民を英雄的に描く画家として1867年にパリ万国博覧会で名声を確立しました。この作品は、ミレーがバルビゾンに移って間も無い頃に描かれました。伝統的なフランス絵画の構成に倣いつつ、すでに完成された自己の様式を示しています。これは、1850年から51年にかけてのサロンに、《種を蒔く人》と同時に出品され好評を得ました。以前より彼の絵画を認めていた詩人・小説家にして美術評論家のテオフィル・ゴーティエもまた、この絵の筆致の粗さを難じながらも、その美しさを称賛しています。
【解説】 横浜美術館 学芸員 新畑泰秀