取材日記

2009.11.20

敵の敵は味方!これぞ南米サッカーの常識!

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7月15日、南米王者にエストゥディアンテス(アルゼンチン)が輝きました。注目は「小さな魔法使い」の異名を持つMFベロン(34歳)です。父ラモンさんもアルゼンチン代表選手で、エストゥディアンテスを南米王者3連覇(1968-70)に導いた名プレーヤー。「魔法使い」の愛称で親しまれていたので、その才能を受け継いだ息子は「小さな魔法使い」と呼ばれているのです。エストゥディアンテスが南米王者となったのは、ラモンさんの時代以来。実に39年越し親子二代での偉業を成し遂げたわけです。

現在、アルゼンチン代表でもあるベロンは試合後、同じくクラブワールドカップ出場を決めたバルセロナのメッシ(代表ではチームメイト)に対し「メッシ、俺たちに気をつけろよ!」と対戦を意識した発言。メッシもベロンとの対戦を待ち望むコメントをしていたそうです。今から12月が楽しみですね。

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今回、南米王者を決めるコパリベルタドーレス決勝を取材しましたが、私にとっては初体験。南米ツウの解説者の都並敏史さんと一緒に取材をしました。試合前サポーターが放った爆竹が足元で炸裂し、閃光と爆風が走った時には2人で飛び上がりましたが、そういったことも含めて南米サッカーをしっかりと肌で感じることが出来たように思います。その南米には、私たちの知らない常識が数々ありました。決勝の地はブラジル。ブラジルの食堂は量り売りが常識。伝統的な豆料理や肉を更に盛ると、そのまま秤の上へ。重さだけで値段が決まります。街中のアイス屋も量り売りでした。

名前に関する常識も一つご紹介します。ブラジルでは小さい人の名前の最後に「○○ーニョ」をつけるのが常識。あのロナウジーニョの名前は本当はロナウドです。でも、ブラジルサッカー界にはワールドカップ日韓大会で大活躍したロナウドがすでにいた為、小さい方ということでロナウジーニョになったのです。
ロビーニョ、トニーニョ、ジュニーニョ、レナチーニョ、シシーニョ…。よく考えるとたくさんいますね。

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そして、私が一番驚いた南米サッカーの常識です。ここに登場するのは、決勝を戦ったエストゥディアンテス(アルゼンチン)とクルゼイロ(ブラジル)。さらに、クルゼイロと同じ町を本拠地にするアトレチコ(ブラジル)の3チーム。日本人には想像出来ないほど、クラブへの愛情が強い南米のサポーター。アトレチコのサポーターは、同じ町の宿敵クルゼイロが南米王者になって喜ぶ姿を死んでも見たくない。だから応援するのは――エストゥディアンテス!
ブラジルとは犬猿の仲のはずのアルゼンチンのクラブなのに・・・。南米では「敵の敵は味方」は常識なんですね。

アトレチコサポーターは、エストゥディアンテスのブラジル入りを空港で大歓迎。ベロンに自分たちのクラブの旗を渡し、「俺たちは味方だ。一緒に戦おう」と意思表示をするわけです。その願いが叶ってエストゥディアンテスが優勝すると、翌日は町中が大騒ぎ!宿敵クルゼイロを倒してくれた英雄ベロンをお面をかぶったサポーターがそこら中に出現し、挙句の果てにはベロンと同じスキンヘッドの方が崇められていました。

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一方、敵地ブラジルで思わぬ援軍を得て優勝したエストゥディアンテスは、帰国後の凱旋パレードで、アトレチコの旗を掲げたのでした。なんとも熱いクラブ愛を感じさせる南米サッカーの常識でした。今年で5回目を迎えるクラブ世界一決定戦。今回は日本ではなくUAEでの開催となり目の前であの熱戦を見られないのは残念ですが、世界各地で開催されることで、この大会のステータスはさらに上がっていくことでしょう。

現在、私たちは世界最高峰の戦いを総力を挙げて放送すべく、日々準備を進めています。メッシ(バルセロナ)、ベロン(エストゥディアンテス)ら世界のスーパースターが競演するこの大会に、どうぞご注目下さい。

チーフ・ディレクター O