取材日記
2009.12.01
遠くて近い国アルゼンチン~エストゥディアンテス取材より
アルゼンチンは遠くて「近い」国。
確かに遠いです。
飛行機だけでも24時間。
行きの飛行機ではなぜか5列の席の真ん中で、トイレに行こうものなら2人に席を立ってもらわないと用が足せない。(編集注:藤井アナは身長181cmです)
純日本人の私にそんなお願いはできないので、どちらかの人がトイレに立つまでじっと我慢していました。それを10時間近く続けるのは精神的につらい。
でも「この先に幸せが待っている」と言い聞かせ、我慢したのです。
その甲斐あって、見事幸せにたどり着けました!
到着したその日に、ボカ・ジュニアーズの試合がボンボネーラ(ホームスタジアム)で行われるのを知り、観戦!
試合は4-0でボカの勝ち。私の後ろに写っているのはアウェーのサポーターが帰るのを待つ、ボケンセ(ボカのサポーター達)です。
試合内容によっては暴動や喧嘩がおきるアルゼンチンでは当然の措置ですが、思わず写真に収めました。これがアルゼンチンか…。
南米初上陸の私にとっては初日から刺激的でした。
翌日からはクラブW杯に出場するエストゥディアンテスの取材に没頭します。家族を愛するようにクラブを愛するエストゥディアンテスは結束が固い。みんなで世界一になるんだという思いが強いため、メディアに対する壁も高いのですが、なんとか練習取材を許可してもらいました。
エースであるベロン選手の周りにはたくさんの記者がいましたが、クラブワールドカップについては全くしゃべりません。すべては目の前にある試合にすべてを出し切ることを念頭においています。
もちろん勝利を待つサポーターのため。
地元記者も、コーディネーターも
「ベロンは曲がったことが嫌いだから、無理して取材すると一生コメントをくれない」と口をそろえるので、遠くから見ているだけ。
それでもあのベロンが、自分の育ったクラブで練習しているのを見ると、感激します。
こんなことから少し見えてきますが、ベロンを含めアルゼンチン人は「昭和の心」を持っています。何か近所で問題があったら、みんなで集まって解決する。そこには打算も何もなく、仲間が困っていたら当然助ける。
昭和の日本人が持っているものを、アルゼンチン人は持っています。
友達の失恋にだって仲間が集まって励ます。
夕食には、炭火で焼いた牛のホルモンやカラッとしたビール。
完全に新橋のサラリーマンがすきそうなものを好んで食べます。
ある取材の朝、コーディネーターに電話がかかってきました。
「雨だけど、取材には行くのか?」
なんと、その日お世話になるタクシー運転手からの連絡。
「取材に行かないとなれば、お金がもったいないだろ!」
南米=アバウトな方程式は完全に崩れ、このホスピタリティは日本人のそれと似ている…と。
多くの外国人と取材を通して接してきましたが、ここまで細やかなケアをする外国人を私は、知りません。なんだか日本人のような気持ちを持った人種だな…。
海外と飛行機が嫌いな私が、もう少しここにいたいとはじめて思いました。
バルセロナも好きだけど、アルゼンチンも好きだ。
だから、バルセロナとエストゥディアンテス、どちらも負けてほしくない。
これが取材を終えた今の本音です。
さてさて今年はどんな大会になるのか、今から非常に楽しみですっ。
アナウンサー・藤井貴彦
いまや街ではボカと並ぶ注目度です。
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